Dr.Flower 1st album「MUSICUS!」感想

心を揺さぶられる物語を体験した後、それが終わって自分の日常に戻るとふと悲しくなることがある。それは物語の中でキラキラと輝いていた登場人物と何者でもない自分との落差を否応なく実感してしまうからだろう。結局キラキラと輝く登場人物と自分自身は全く別の世界に生きる全く別の人物で、彼らのキラキラする楽しそうな人生を僕は歩めないんだ。それが眩しくてしょうがない。
物語から覚めた僕は相変わらず普通のサラリーマンでのしかかる仕事やら責任やら劣等感やらを抱えながら、とりあえず今日をやり過ごすことしかしていない。今日も自分の無能さと降ってくる仕事のレベルの高さに落ち込ん胃が痛くなり、やらないといけないことが迫ってきて焦ってしまい仕事に手が付かないって悪循環だ。
どうやったらあんなに輝けるんだろう。これで僕が10代とかだったら、キラキラした新たな道を目指した可能性もあるんだろうけど、もう歳もとってしまった。今の自分の状況が嫌なのに、かと言ってそれを変えようと動くこともできていない。そういえば3年前も仕事を変えようと、もっと今より穏やかな生活がしたいと思って動いていたけど結局途中でやめてしまった。
これが大人になるってことなんだろうか。


ああ、こういうときは音楽を聴くんだ。
アップテンポなリズムと前向きな歌詞。それで少しはこの胸の不安が安らぐんだ。

 

というわけで、先日プレイしたMUSICUS!、全ルートクリア後に注文してたボーカルアルバムが届いた。

ゲーム中では曲は一部しか流れなかったり、テキストと同時に流れるので歌詞をじっくり聴けなかったりしたので、改めて歌詞カードを読みながら聴くとゲームの場面が蘇ってくるよう。

「はじまりのウタ」はMUSICUS!のオープニングテーマともいえる曲だが、まだ三日月エンドに辿り着く前の不安も期待も入り混じった感情が歌詞に表れているような気がする。

「Pandora」は三日月から是清への「もう一度会いたい」という気持ちがストレートに描かれている。

そして「Magic Hour」はゲームのグランドフィナーレを迎えた後の迷いを振り切って進んでいこうという心情が描かれている。曲の終わりに三日月の「はじめまして!Dr.Flowerです!」が聞こえてきそうだ。

弥子ルートのNIGHT SCHOOLERSの曲はよりストレートに「未来への希望」や「感謝」を歌っている。NIGHT SCHOOLERSの曲は不器用な彼らが「世界と繋がる」ための方法なんだと思う。音楽で世界を変えてやろうなんてことはこれっぽっちも思っていない。だけど、社会からドロップアウトした自分たちを見てほしいというところが原動力になっている。
「真夜中チャイム」「ミライ」は「自分達もここにいる」と高らかに歌うし、その後に昼間に通う生徒と一緒に校歌は歌うっていうのはどっちの生徒が偉いとかそういうことじゃなくて、みんな同じ学校に通う学生だってことを表現するのにちょうどいいんだなと思った。

ボーナストラック扱いの「no title」に関しては怖いので毎回スキップしてしまう…

 

やはり全曲通してその曲が歌われた場面を思い出す。やはりミュージシャンが望む望まないに関係なく、聴き手側は曲と「物語」を結びつけてしまうものなのだ。

Dr.Flowerが活動を続けて2ndアルバムが出ることを祈っている。